カワヅが考えていること

カワヅが考えていることです

蜘蛛の糸

風呂の蓋を半分開けて湯船に浸かっていると、体長2mmも無いくらいのちいさなちいさな蜘蛛がいつのまにか風呂の蓋の上にいた。しばらく右往左往していたのだが、どうも水滴を避けて安全な場所に行けるルートが見つけられないようだ。水から数ミリ離れたところで判断していたが、材料は視覚だろうか、それとも水分を検知する能力があるのだろうか。それはともかく、脱出ルートが見つからない蜘蛛がどうしたかというと、ビタッと動きを止めて微動だにしなくなった。安全が訪れるまでそうすることに決めたらしい。湯船から出て水を飛ばさないように慎重に身体を洗い、風呂の蓋にいる蜘蛛を確認して、蓋を乾かす位置に動かしてそっと風呂場を後にした。風呂の蓋を持って外まで流してやっていたら後で恩返しに来てくれていたかもしれないがそれはやらなかったので何も起こらない。